「和菓子でも洋菓子でもない、新しいお菓子が作れたら食べてみたいな」
数年前、和菓子職人を目指して働き始めた頃、ショコラ好きの友人と話した何気ない会話は、忙しい毎日にかき消されて、すっかり忘れてしまっていた。
そんな時、社内で新ブランドのキックオフミーティングが行われ、「とにかく、新しくて美味しい新感覚のお菓子を提案してください。和菓子・洋菓子は問わないので自由に作って」と職人たちに話しがあった。

作るだけではなく、新商品の企画に携われるチャンスに、わくわくしないわけがない。
その日から、雑誌や百貨店などさまざまなお菓子を見て歩いた。
店頭に並ぶ、さまざまなお菓子たち。洋菓子も和菓子も、姿も味も多種多彩で見ているだけでワクワクするが、どんなものを作ればよいかイメージは膨らんでは消え、悩むばかりの日々が続く。そんな時、忘れていた会話をふと思い出した。

しっとりとした食感、ふんわりと広がる香り、濃厚でコーヒーにもよく合うような…そんなショコラを作りたい。

その日から、試行錯誤が始まる。

とにかくしっとり感を出すために、さまざまな素材を使ってみたが、どれもうまくいかない。どうしたものかと考えたとき、代表銘菓どら焼で使用する、こしあんのなめらかさを思い出した。「和の持ち味をもっと生かさないと」。
そうして出来上がった抹茶テリーヌ。